御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
「丈夫だからって……」
「いいから。俺がそうしたいんだ」
そして雪成は丁寧に美月の体の上の雫を拭っていく。
その優しい手つきに、美月は混乱してしまう。
(さっき、菜穂さんとキスしてたのに……。どうして……?)
おそるおそる顔を上げると、雪成の漆黒の瞳と目があった。
何か言われるかと思ったが、雪成は何も言わず目を細め微笑むと、そのまま頰や額の水滴をぬぐう。
(よかった。泣いたのもわからないみたい……。)
あの場面を見たとは絶対に知られたくなかった。
雪成と気まずくなりたくない。雪成を困らせたくない。たとえ終わりがすぐそこに来ているとしても、雪成には感謝の気持ちのほうがずっとずっと多いのだ。
そこへハジメが熱いコーヒーを配りながらやって来る。
リビングの端で雪成が美月を拭く姿を見て、軽く首を傾げた。