御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
まさか捨てはしないだろうと思ったが、もらわれていったと聞いて一安心である。
「そういや結局最後まで面倒みてたの、ユキだけだったよ」
ハジメの言葉に、雪成は何も言わず肩をすくめる。
「そうよ。ユキは人一倍、優しいんだもん」
菜穂は、雪成の背後から肩にタオルを乗せると、そして美月を見て、邪気なくクスッと笑った。
「いつだって、目の前の困ってる弱くて小さい存在を、見捨てられないのよね。それで損をすることいっぱいあるのに」
菜穂の目尻のつり上がった大きな瞳は、その瞬間、雪成越しに美月を見つめていた。
美月の心臓が跳ね上がる。
(今の、私に向けて言った……?)
まさかと思ったが、そのままスッと離れていく菜穂の後ろ姿を見て、勘違いではなさそうだと、悲しくなる。
(彼女からしたら、確かに私って、雪成さんが見捨てられない、弱ってる小さな存在なのかも……。)