御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~

 だが、ふと胸騒ぎを覚えた美月が、
「菜穂さん?」
と、肩に手を置いた。その瞬間。


「……うう……」


 うめきながら、そのまま菜穂はズルズルとうつ伏せに倒れていく。

 覗き込むと顔が土色になっていた。


「……菜穂さん!」


 美月が声を上げたその瞬間、雪成が助手席から飛び降り、後部座席のドアを開け身を乗り出してきた。


「ハジメ、家人を呼べ」
「わ、わかった……!」


 ハジメが運転席から飛び降り、門へと走る。そして雪成はグッタリした菜穂の顔を落ち着いた様子で眺め、
「菜穂、俺の声が聞こえるか」
と耳打ちした。


「……ゆ、き……」


 小さな声だが、返答があった。


「ユキ!」


 屋敷の人間と連絡を取ったらしい、ハジメが玄関から走って戻ってくる。


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