御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
「赤ちゃん……生まれるの?」
「……いや。美月と別れた後、問い詰めたら嘘だって言われたよ」
「……」
まるで熱砂の砂嵐の中に巻き込まれたような気がした。
美月の心から、轟々と竜巻のような感情が吹き出し、美月自身をさらい、すり潰し、揉みくちゃにする。
「そんな……」
目のふちから、涙が盛り上がる。
「……美月っ」
切なげに眉を寄せ、手を伸ばしてくる滉一の手を、
「触らないでっ……」
美月は拒絶し、逃げるようにベンチから立ち上がった。
「私が泣いてるのは、滉一くんのことを今でも好きだからじゃないっ……! 変な勘違いしないでっ……」
そしてバッグからハンカチを取り出して涙を拭いた。
「自分の涙くらい自分で拭けるわっ……」
(そうだ。もう甘えない。自分のことは自分で決着をつけるんだ。)