御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
「頑固だよなぁ、美月は」
「そんなこと……あるかもしれないけど……」
「もう少し、信じてもいいと思う。男は美月が思うよりずっと単純だからさ……って、イテッ!」
気がついたら美月は滉一の腕のあたりをグーで殴っていた。
「ごめん、なんだかちょっとムカっとして」
「……だな。信じてとか俺のセリフじゃなかったわ。マジでごめん」
そして二人の視線が重なる。
お互いの表情がふっと緩む。
(この感覚……懐かしいな。でももう滉一くんとこんなふうに目を合わせることはないんだな。)
滉一に未練があるわけではないけれど、彼と過ごした八年間の思い出は、やはりこれからも美月の中で生き続けるのだろう。
「じゃあ俺、行くよ」
「加藤さんと仲良くね」
「ありがとう」
そして滉一はくるりと背中を向けて歩き出す。