御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
「堤さんですよね」
「そうそう。よく知ってるね」
「私、この近くの税理士事務所で働いていたので、先生のおつかいでよく商工会議所に行ってたんですよ」
「へーっ、そうなんだ! じゃあ絶対、俺たちどこかですれ違ってるよ」
ハジメは快活に笑いながら、美月の肩を抱き、出入り口で人の邪魔にならないよう横に移動する。
「この後の予定は?」
「とっ、とくに……」
至近距離でハジメの顔が近づいてきて、心臓が跳ねる。
「じゃあお見舞いは十五分で切り上げてくるから、俺とお茶でもしない?」
「あ、はい。じゃあそこで待ってますね」
あまりにもスマートに肩を抱かれて、誘われて、拒む暇もなかった。
「やったっ……!」
ハジメはガッツポーズをしてから、
「約束だよ。気が変わったとかなしだからね。戻ってきてみっちゃんいなかったら、俺泣いちゃうよ?」
と、真面目な表情を作った。
つくづく愉快な男である。
「はい、ちゃんと待ってます」
美月は笑ってうなずいた。