御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
「ああ、ええ……」
身長は平均よりも少し高く、地味な装いではあるが、しっとりした雰囲気の美人である。
(ハジメが好きそうなタイプだな……。)
失礼なことこの上ないが、雪成はそんなことを思いながら、うなずいた。
すると女性はバッグから紺色の折り畳み傘を取り出し、雪成に差し出す。
「よかったらこれ使ってください」
「え?」
にっこりと笑う邪気のない顔には、なんの裏も感じられなかった。
おそらく雪成がどこの誰かも知らないのだろう。土砂降りの雨をぼんやり眺めている男がいたから、純粋に困っているのだと思ったに違いない。
「……ありがとう」
つい、その親切にあてられて折り畳み傘を受け取ってしまったが、ハッと気付いた。
「君の傘は?」