御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~

「私は大丈夫です。車で迎えが来たから。傘はいつでもいいので、ここの誰かに預けておいてください」
「あっ、君……!」


 そして彼女は、雪成の次の言葉を待たず、エントランスから外へと駆け出していく。

 数メートル先には営業車らしい車が停車していて、紡績会社の名前が書いてある。
 彼女は助手席に乗り込むと、運転席の男と、笑顔で言葉をかわし始めた。

 男が女の髪に触れ、頬に触れ、ハンカチで水滴を拭う。


(恋人……同士なんだな。)


 女の方はくすぐったそうに笑い、身をよじりながら微笑んでいる。

 その目は優しく穏やかで、信頼に満ちている。

 雪成は純粋に、そんな目で見てもらえる相手の男を、羨ましいと思った。



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