御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~

(ずっと一人……か。)


 寝室から毛布を持ってきて、ハジメの上にかける。


 確かに菜穂と別れてから、特定の女性ときちんとした形で付き合うことはしていない。

 当然、周囲は面白半分にあれこれ言うが、雪成はまったく揺らがなかった。


 結局、自分は、己の気持ちを他人にさらけ出すことが、苦手なのだ。
 それは同時に、他人から向けられる好意も、あまり信じていないということを意味する。

 それは雪成が子供の頃から変わらない。
 たとえそのことをどれだけ責められても、自分は生き方や考え方を変えられないとしか思わない。


(なのに、彼女は、全てをさらけ出すような顔をしていたな……。)


 車の中で水滴を拭かれていた彼女は、完全に無防備だった。自分に向けられる好意を素直に受け止めて、幸せだと顔に書いてあった。


(怖くならないのだろうか……あんな風に他人を信じられるなんて、羨ましい……。)


 それから彼女の顔が、頭から離れなくなった。



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