御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
雪成の全身に緊張が走った。
(……彼女だ!)
待ちに待った、彼女との再会だった。
(ここの社員だったのか? いや、そんなことはどうでもいい。早く声をかけなくては……)
だが、雪成の胸は高鳴り、呼吸がうまくできなくなる。
「あら、森田さん」
雪成のそばに立っていた社員は「失礼します」と軽く会釈して、なんと彼女の元に駆け寄ってしまった。
「こんにちは」
“森田さん”と呼ばれた彼女は、腕にしっかりと封筒を抱えたまま、女性社員に会釈する。
雪成はちょうど女性社員に隠れて、まったく彼女の視界に入っていないようだった。
(だが、このあと呼び止めればいいだけだ。)
そう、自分に言い聞かせて、彼女を見つめた。
なぜか梅雨の頃に出会ったときよりも、さらに輝いて見えた。
(なぜだろう……。思い出は美化されるものなのに、今、目の前の彼女の方が、あの時の彼女よりもずっと魅力的に見える……。)