御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
まったく思いつかないようだ。
(どういうこと?)
「あの……社長にお付き合いして料亭に行ったときに……社長が、雪成さんが結婚するとかなんとか……上機嫌で周囲にお話になったみたいで。だから私、菜穂さんと、よりが戻って、結婚するんだって……思って」
もちろん今はそんな風に疑ってはいないが、雪成に気持ちを聞く以前の自分は、それで深く傷つき、話し合いの場を持とうとした雪成から逃げてきたのだ。
雪成は黒髪をグシャグシャとかき回す。
「それは……あー、まいったな……そんなことまで耳に入ってたのか」
「な……なんですか! もうここまで言ったんだから洗いざらい話してくださいっ!」
(もういやだ、絶対いやだ、後からあれこれ聞かされるなんて、これっきりにしてくれなきゃいやだっ!)
美月はバシバシと雪成の膝を手のひらで叩く。
こうなると折れるのは当然雪成だ。