御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
「いえ、そういうのは特に……」
「なんだ……じゃあみっちゃんからもユキ誘ってみてよ。屋形船から見る花火は綺麗だよ」
「はぁ……」
美月はあいまいに頷きながら、首をひねる。
(来週の花火大会……。雪成さん、なにか用事があるのかな? 私は特に週末の予定を聞かれてないから、どうしようかなとは思ってたけど……。もしお休みなら、私のことなんか気にしなくていいから、休んで欲しいな……。)
なにしろ雪成は【KOTAKA】の後継で忙しい男だ。一月に、完全なオフなど数えるほどしかない。
だから美月は、基本的に、雪成が休めるときには休んで欲しいと思っているのである。
それから間もなくして、雪成が足早に副社長室に戻ってきた。やはり取引先に足止めされていたらしい。
「ハジメ、待たせて悪かったな」
「いや、いいよ。別に。彼女に話し相手になってもらってたしね」
「ああ……」
雪成の漆黒の瞳がお盆を持ったままの美月を捉える。