御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
(大丈夫。私は平気。傷ついてなんかいない。これから先も、傷つかない。私は平気……。傷ついてなんかいない!)
「そうなんだ。おめでとう」
「美月……」
「私も知ってる人?」
滉一の相手が誰かなんて、死んでも知りたくない。
そんな思いを込めて、精いっぱいにっこり微笑み、滉一を見つめる。
「ああ……」
だが滉一は美月の問いかけをあっさりと肯定し、目を伏せる。
(知ってる人……そっか。せめて全然知らない人が、よかったな……。)
考えたくもないのに、高校、大学、社会人になってからの、知り合いの女性の顔が走馬灯のようにぐるぐると頭の中で回る。
(誰、誰なの……?)
絶望のあまり、握りしめた指先がどんどん冷たくなっていくのが自分でもわかる。