御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~

 それでも美月は、絶対に滉一の前で泣くものかと、涙をこぼすことだけは耐えて、唇を強くかみしめ続ける。


「美月、俺は……」


 そんな美月を見て、滉一が一歩足を踏み出す。


「……や、っ」


 フロアにはたくさんの人間がひしめき合っている。
 絶対にそんなはずはないのに、滉一の手が伸びた時、抱きしめられるような気がしたのだ。


(触らないで、他の人を好きなくせに、私に触ったりなんかしないで、苦しめないで!!)


 その瞬間、硬直した足がもつれて後ろに倒れそうになる。


「あっ……!」


 よろめいた瞬間、背後にいたらしい、誰かの広い胸に抱き止められていた。


「す、すみませ……」


 慌てて振りあおぐと、そこにはどこか不機嫌そうに、自分を通り越した先の滉一を見据えている副社長、小鷹雪成の顔があった。



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