御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
「もうっ、人の顔で遊ばないでください! それに不平不満なんてありませんから!」
あるとしたら、この副社長が男として魅力的すぎて、ちょっと困るくらいのことだ。
(からかわないで欲しいのに……。)
「はいはい」
軽い調子で雪成は肩をすくめる。
美月の上司であるこの男は、万事が万事この調子で、今回もまったく反省した様子もなく、持っていたタバコを唇に挟み、また窓の外を眺めた。
(もーっ、この人はどんだけ自由なの……。)
呆れながら、美月も窓の外に目をやった。
ちょうど日が落ちる、黄昏時である。
KOTAKAで働くことになる三ヶ月前まで、自然いっぱいの田舎町に住んでいた美月の目には、石造りの建物と、近代的なビルが混在するここは、不思議な風景に映った。
(ショーウィンドウにオレンジの明かりが映えて、とてもきれい。日本橋って老舗企業の本社が多いから、ビルも風情があって素敵だなぁ……。)
「来週、出張に行く。火曜の朝から三泊四日だ」