御曹司による贅沢な溺愛~純真秘書の正しい可愛がり方~
美月は三ヶ月前に上京するまでの二十五年間、ずっと徳島県鳴門市に住んでいた。
二つ年上の姉と、公務員の父と、専業主婦の母の四人家族で、地元の高校、家から通える大学を出て、のんびりとした日々を送っていた。
周囲の人間からは、石橋を叩いてもなかなか渡らないと評されるレベルの慎重さで生きてきた。
そんな美月の人生が変わったのは、五ヶ月前の去年末のことだった。
高校生の頃から八年付き合っている彼との年末デートの別れ際、車の中で別れを切り出されたのだ。
「別れよう」
別れを切り出される心当たりはなかった。大きな喧嘩などしていなかった。
一週間前、彼と過ごしたクリスマスはなんだったのか。
別れの気配を感じ取ることができなかった美月は、ただ
「どうして?」
としか問えなかった。