ラブジャンプ!
昼ご飯を食べ終え、2人は再びオセロの勝負をし、日が傾き始めた頃、
夜からアフレコの仕事があるからと、今日はお開きとなった。
夜からお仕事なんて、そりゃ不規則な生活になっちゃうよね…。
「恭輔、ごはんくらいいつでも食べに来いよ。
桃子の田舎くさいおかずだけどな。」
玄関で靴を履く桜木くんに杏が言う。
「ちょ、田舎くさい、とは何よ! まぁ、いつでも…、ってワケにはいかないけど…」
「ありがとうございます。行くときは、杏ちゃんにラインしますね」
え? ライン…て? いつのまに…。
驚く私に、ニヤリと片唇をあげ、叔父さんに買ってもらった子供用スマホをみせる。
まったく、この子は…。
玄関の扉を閉める時、桜木くんはきちんとお辞儀をして去って行った。
見た目、赤めの茶髪に相変わらずボロボロのジーンズ(若い子のファッションだろうけど)と
誰でも知ってるスポーツブランドのジャージ。
そんななのに、行儀や姿勢はキッチリとしてる。
うーん、絶対どっかの御曹司? いや大会社の会長の愛人の子?だったり?
私の頭の中の妄想は膨らむばかり…。
あ…
そういえば、一番気になっていたこと聞くこと忘れていた。
水嶋製菓のエリート社員しか入居してないこのマンション。
なぜ、彼がこのマンションに住んでるのだろう…
妄想と疑問がグルグルと頭の中を駆け巡った週末だった。
そして…
この平凡な日常に、桜木恭輔と知り合ったことによって
私と杏のこの後の運命を変えることになろうとは、この時は思いもしなかった。