ラブジャンプ!
桜木くんの部屋へ来てから2時間ほどが経った。

39℃近い熱は、すぐには下がらない。

時々、スポーツドリンクにストローを差したペットボトルを
口元へ持っていけば、少しずつだけど飲んではいる。

山口さんも、仕事が押してるのか、まだ来ない。

夕飯の時間も過ぎてるから、杏のおなかも減ってきてるだろうし、
なにか作らないとな…。

そう思いながら、桜木くんの寝室を少し見回すと
ローチェストの上にフォトスタンドがいくつかあった。

近づいて、そのひとつを手にとってみる。
幼い頃の桜木くんであろう男の子と、そして見覚えのある建物と人物が写っていた。

「え…。ここ、ひまわり孤児院…。それに、おじいちゃんに鍛冶さん。」

今より若い風貌の二人と、桜木くんの他に数人のこどもたち。
敏樹の言ってたことは、本当だったんだ。

桜木くんは、ひまわり孤児院で育った…ってこと?…。

その写真をじっと見つめながら考えていると。

「ん… 誰…?」

背中から、ぼそり、と聞こえた声に振り向く。

「あ、桜木くん、気がついた?!」

ベッドの傍にかけより、顔色を窺おうとすると…。

片腕をぐい、と引っ張られた。
「えっ! ちょっ、うっ」

桜木くんの胸に私の顔が埋められた。

「うっ…はぅ…ちょ、くるし…」
病人のクセにどんだけ力あるのーーーーーっ

「あー ふかふか、やらけー」

「ちょっ! 桜木くんっ! 離してちょうだい! 私は布団じゃない!」

必死に抵抗するけど、全然離してくれない。

と、思ったら…

ウソ……。

こんなことがあっていいいのだろうか…。

柔らかなものが私の唇に当たっている…。

どうやら、これは…

唇のよう…。

ウソでしょ…。

私…

桜木恭輔に…

キス、されちゃったよ!!
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