ラブジャンプ!
おじさんの提案に乗って、退出期限の一日前の引っ越しとなった日曜の今日。
約束通り元アパートの大家さんも手伝いに来てくれた。
さて、
おじさんの提案というのは…。
2年ほど前に出来た会社所有のマンション。
ここに入れるのは、ごく一部の独身エリート社員のみ。
先日、海外勤務が決まった社員が出て行ったため1部屋空いたのだという。
ただし、おじさんは、私たちに条件をつけた。
このマンションの管理は、セキュリティ会社に任せてはいるが、
細かい管理(ゴミ当番だとか、配達ボックスの管理等)は、
おじさんの奥さんが担当してたそう。
だけど、奥さんが足を骨折して、思うように動けなくなった。
その奥さん担当の管理を私たちが引き受けるならば
前のアパートと同じ値段で住まわせてくれるという!
そりゃあもう!引き受けるしかないでしょっ!
と、いうワケで今日の引っ越しとなった。
結菜が紹介してくれた不動産屋さんは、
条件が合わず違う不動産屋さんを回ろうかと考えていたところへ
おじさんの話がきたから、めっちゃラッキーだった。
このマンション
1階はクリーニング屋さんと花屋さん、
2階はネイルサロンと美容室が入ってる。
どのお店もタウン誌やフリーペーパーに必ず載っている人気のお店だった。
私たちが住むのは3階。
引っ越し業者を頼むほど私たち親子の荷物は少ないので
大家さんが用意してくれた軽トラで移動。
エレベーターはあるけれど、引っ越しの時は使ってはいけないルールだそうで。
当然、
そこまで荷物を持ち、何往復もしなきゃならない。
何往復めだろうか、普段階段なんて使わないから膝が笑って手すりに捕まり階段を降りてると…
「あれ? もしかして桃子さん?」
聞き覚えのある声に、後ろを向けば、
「え?! 結菜?!なんでここにいるの?」
「桃子さんこそっ!」
お互い顔を見合わせる。
「あ、えーっと、今日からココの住人なの 結菜は?」
「あ、私、去年から住人でして…」
そうか、そうだ!!
エリート社員しか入れない、っておじさん言ってた。
すっかり忘れてたけど、結菜もエリート社員だった。
「紹介した不動産屋さんでいいところ見つからなかったようなので心配してましたけど、
ここなら安心ですよね。
それに桃子さんたちが一緒ならいつでも遊びに行けますね。
ここでも宜しくお願いしますね」
「あ、うん、こちらこそ!!
不動産屋さん紹介してもらったのに、ごめんね」
いえいいぇ、と手を振り、これから出かけるからと結菜は足早に去って行った。
私が社長の姪だと結菜は知ってるから、
私たちがここに住むことになったというおおよその理由は理解したのか、
何故来たのかまでは問い詰めはしなかった。
さすが、頭のキレる人は違うねぇ…。