ラブジャンプ!
お腹を空かせた育ちざかりの?青年を追い返すほど冷酷な心は持ち合わせていないため
一緒にお昼ごはんを食べることになった。
さっき、スーパーで買った魚を塩焼きにし、
数種類のキノコをササッとごま油で炒めて味付けして
昨日、煮てタッパーに保存しておいたカボチャと豆腐のパックを冷蔵庫から出す。
いい感じに温まったお味噌汁の鍋に、豆腐をパックから出し、
さいの目に包丁でカットし、お味噌汁の中に入れてひと煮立ちさせた。
「できたよー」
ローテーブルで今度はオセロの勝負をしていた二人に声をかける。
「「はーい」」
テーブルに並べたお昼ご飯を見た桜木くんが、おかずたちを見たまま
椅子に座ろうともせず立ち尽くしていた。
「桜木くん? どうしたの? あ、もしかして嫌いなものあった?
ごめんねぇ、うちは節約の意味もあって超和食なの…」
「いえ、違うんです。」
私の言葉を遮った桜木くんは、
仕事が忙しくなってから不規則な生活のため
超ジャンキーな食生活で
何年かぶりに目の前にした家庭料理を見て、衝撃を受けたと語った。
「そうだよな。恭輔、この1年で急激に売れ出したからな。
どのアニメにも主役端役関係なく、キャストに名前あるもんな。
アニメ雑誌だって絶対載ってるし、イベントも出てんだろ?
ちょっと、働きすぎじゃね?
事務所も恭輔ばっか稼がせて、ひどくね?」
5才の子供が言う言葉か?と思うほど、杏は桜木くんを心配する。
「杏ちゃん、心配してくれてありがとな。」
杏の隣の椅子に座り、桜木くんは杏の頭をひと撫でした。
「でも、オレ、目的があるから…。そのために頑張ってるんだ。」
そう言った桜木くんの表情は唇を引き締め真剣だった。
「さてと! めっちゃ旨そう! いただきます!」
両手を合わせ、嬉しそうに目の前の料理を食べ始めた。
見ると、キレイなお箸の使い方、肘などテーブルに着かず背筋をきちんと伸ばして
よく噛んで食べている。
なんと、キレイにご飯を食べるのだろう…。
若いのにこんなキレイに食べる子は見たことがない。
もしや、御曹司か?!
しばらく、桜木くんのご飯を食べる様子を眺めてしまった。