病床のキス【短編】
設計主任の指示を仰げ
「頼むよ相田ちゃん、コレ、ジンちゃんにしか分からないから!
 ね?急ぎで修正、してもらってきて」 

「はあ…」

 (株)ナインコンサルティングの設計課主任、木ノ下仁(キノシタ ジン)が、先般行われた社内課対抗ソフトバレー大会で骨折し、1週間が経っていた。

「でも…」

「課長、ジン先輩のお見舞いだったら、私が行きますよ」

 横から割って入る甘ったるい声。

 …ホラね。だから私は……

「イヤイヤイヤ、水無月ちゃんはコッチ。急いでやってもらわないといけないから、ね?」

「え~?」

 水無月アカリはプクッと頬を膨らませた。
 入社3年目の25歳。
 フットワークの軽い、ハキハキとした彼女は、ミニスカートのよく似合う課の皆の人気者だ。

 そして、我が設計課のエース、件の木ノ下主任と付き合っていると専らの噂である……

「あ、あの~、私がソッチやりますから…」

「やった!サスガは相田先輩」

 ところが課長ってば、全く空気が読めてない。
 
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