甘い上司と三度目の恋を
第一章
ゆっくりと、目を開けた。
朝目が覚めると、私はまず、自分の居場所と周りを確認する。
ちゃんと、私の家、私の部屋。
ほっと一息吐いた。
この儀式を、一体いつまで続けるのだろう。
しょうがない。
もう無意識に繰り返していることで、自分ではどうしようも出来ないのだから。
取りあえず、準備しなきゃ。
私は布団から出た。
顔を洗おうと、洗面所に向かった。
朝はいつも、さっと水で洗うだけにしている。
夜は化粧落としも兼ねて、洗顔料をつけて洗っている。
まだ若いから大丈夫と甘く見ているけど、25なんて四捨五入すれば30だし、歳をとるのなんて、きっとすぐ。
やっぱそろそろ気にしないとダメかなぁ?
鏡に写る私にそっと問いかけてみた。
考えるのはめんどくさいと、言っている気がした。
というか、私が思った。
歯を磨く。
あ、そろそろ歯磨き粉切れそう。
ファンデーションを塗って、アイラインを引いて、、、、いつものコース。
最後に桜色を唇に広げたら、
少し笑って見せる。
春物の薄手のジャケットにするか、少し厚いお気に入りのジャケットにするか迷い、結局春物にした。
もうそろそろ春物よね。
胸まである髪は、いつものハーフアップ。
入社当時から変わっていないこの髪型。
初心忘れるべからずよね。
と、コーヒーだけは飲もうかな………
インスタントの香りの無さを感じつつテレビを点けた。
各地では、桜が見頃を迎えているらしい。
空になったカップをシンクに置くと、少し動きにくいスーツで伸びをした。
こうして、朝の準備の諸々を済ませると。
「行ってきます」
いつものように、変わらない一日が始まる。