空の青はどこまでも蒼く
給湯室でお茶を煎れながら、私は山野君のことを考えていた。
あれだけのイケメンなのに、一緒に居ててもドキドキしない。
けど、彼の、あの張り付けた笑顔に惹き付けられる。
彼の言動に心動く。


二人分のお茶を手に、オフィスに戻った。


オフィスの戸を開けると、山野君は窓際に立って窓の外を眺めていた。
その姿は物悲し気で、昼間の山野君からは想像が出来なかった。
あれだけ強気で話し掛けて来る彼からは、そんな姿は微塵も伺わせなかったから。


コトリ・・・


お茶をテーブルに置くと、その音で、山野君は私に気付いた。


「声、掛けてくださいよ。盗み見ですか?趣味悪いなぁ」
「なっ!!盗み見なんてしてないわよっ!」
「嘘、俺のこと、見てたでしょ?」


そう言って、一歩、一歩とにじり寄る山野君の真っ直ぐな射抜くような視線から目が離せない。
テーブルの前、ピタリと止まった山野君は、私が煎れてきたお茶を手に取り、一口飲んだ。
それ以上、近づいて来ない山野君に胸を撫で下ろす。


「おいしい。ありがとうございます。」
「これくらい、いいわよ。」


ニコリと笑ったその瞳は、やっぱり張り付いていただけだった。


「ねぇ、山野君。」


私は昨日から気になってたことを聞いてみることにした。


「私のこと、知ってたの?私達、どこかで会ってた?」


私のその言葉に、一瞬、山野君の顔が歪んだように見えた。


「いえ・・・・・」


消え入りそうな声で、山野君はそう言った。




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