空の青はどこまでも蒼く
「なら、どうして私に構うの?」
「イヤなんですか?俺に付き纏われるの。」
「イヤ・・・・じゃないけど。どうして私なのかなって思ったの。昨日初めて会ったばかりだし。」
「そんなの良いじゃないですか。キッカケなんて些細なものです。」


彼は残りの料理を平らげ、テーブルの上を片付けると、「手伝いますよ。」と隣のパソコンを立ち上げた。


「いいよ、いいよ。部の違う山野君に手伝わすわけ行かないよ。」
「けど、俺が手伝わないと、終電間に合わないですよ。」


そう言われ、時計と資料の残りを見合わせれば、彼の言うことが尤もだった。


「でも、いいよ。山野君は帰って。これは私の仕事だから。」




「一人で全部背負い込むなよ。俺には頼れよ。」




耳元で小さな声で囁かれたその言葉に、私は弾き飛ばされる様に、山野君から離れた。
今までも彼からは想像が出来ない男の部分。
胸の鼓動が鳴り止まない。
上がる息を鎮めようと深呼吸する。


私を振り返った山野君が発した次の言葉。


「何してるんですか?石田さん。早くしちゃいましょ。」


いつもの山野君に戻っていて、いつもの張り付いた笑顔で私を見てた。
私はそれ以上何も言えず、彼に手伝って貰うことにした。




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