空の青はどこまでも蒼く
「遅いですよ。」
「行くだなんて、一言も言ってないわよ。」


そう言って山野君の前を歩き出す。


終業後、ロッカールームで念入りに化粧直しをしたせいで、降りてくるのがかなり遅くなった。
山野君と呑みに行くだなんて思ってもいなかったから、今日は普段着だ。
せめて化粧くらいはしっかりしたかった。


「どこ、行くんですか?」
「さぁ?どこだろうね。」



素っ気なく答え、スタスタと前を歩く。
着いて来なければそれでも良い。
けど、私には必ず山野君が着いて来る自信はあった。


行き付けのバーに向かって歩く。
オフィスから歩いて5分。
有希と祐亮とよく行くバーに向かった。


入り組んだ路地の奥、人知れず佇んでいるその店は、私達のお気に入り。


カランコロン


戸を開ければ、心地良い音が耳に入る。


「石田さん、こんなお洒落なバー知ってるんですね。」
「何?驚いた?」
「いえ、石田さんっぽいですよ。」
「何、それ?」


いつもならカウンターに腰を掛け、バーテンダーさんと話しながらお酒を飲むところだけど、テーブル席に座り、バーテンダーが来るのを待った。


バーテンダーさんが来て、注文を言おうとすれば、


「オリンピックとアプリコットフィズをください。」


私より先に山野君が注文をした。




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