空の青はどこまでも蒼く
定時にエントランスで待ち合わせしようと、お昼休みを終えた私達は、自分達のオフィスへ戻ろうとした。

社長秘書の有希は階上のフロアでエレベーターを降りた。
企画部の私はさらに下の階を目指す。

途中、エレベーターは止まり、1人の男性社員が乗ってきた。
見たことがあるような、ないような・・・・・。


その男性社員のことを気にも留めず、点滅する階を知らすランプを見上げていた。


「石田さん・・・」


前を向いたままのその男性社員が私の名を呼ぶ。


「えっ・・・あ・・はい・・・」


こちらを振り向くことなくその彼は話し続ける。


「石田さんって、綺麗ですよね。」
「はい?何を仰ってるんですか?」


その顔も見えない男の人の背中に問いかける。


「本当の事を言ったまでです。」


そう言い切った刹那、エレベーターは私が降りる一つ上の階に止まり、何事もなかった様に、その男性社員は降りて行った。


「な、何だったの?」


急に話し掛けられたことと、その掛けられた言葉に、胸の鼓動は早鐘を打ち、収まらない。
降りなければならない階で止まったエレベーターも、止まったことすら気付かず、エレベーターの戸は閉まり、下へと降りて行った。


ポーン


階下まで来てしまったエレベーターの戸が開き、前から同期の祐亮が乗って来た。


「降りないのか?」


そう声を掛けられ、我に返る。


「えっ?あっ、降りる、降りる。」
「何ボーっとしてんだよ。もう始まるぜ。」
「えっと、すぐ戻る。先行ってて。」


あまりの恥ずかしさにエレベーターから降りてしまった。
昼の始業時間まで後僅か。
胸の鼓動はまだ収まらない。




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