空の青はどこまでも蒼く
「水族館なら、初めからそう言えばいいじゃない。」


目の前にそびえる大きな建物に私はそう言った。


「良いじゃないですか。着くまでワクワクしたでしょ?」
「途中から気付いてたけど。」
「そんなこと言わないでくださいよ。」


チケットブースに並んでる間も、山野君は私の後ろにぴったりとくっ付いて離れない。


「ねぇ、近いって。」
「良いじゃないですか、デートなんだから。」
「デートじゃないって、言ったでしょ。」


そう言いながらも、彼の胸に背中を預け、周りから見れば、誰がどう言えど、恋人同士だ。




館内は土曜日ということもあり、家族連れやカップルで溢れ返っていた。
大きな水槽の中を優雅に泳ぐ、色とりどりの魚達に目が奪われる。


「きれい・・・・」
「石田さんの方が綺麗ですよ。」
「だから、言ってるじゃない。そういうの止めてって。」
「どうしてですか?恥ずかしいんですか?」
「恥ずかしいに決まってるでしょ。」
「けど、自ら進んでミスコンに出る人が、これ位で、何恥ずかしがってるんですか?」
「あれは、私の意志じゃなかったのよっ!!って、前にも聞いたけど、どうしてそのこと知ってるのよ?」
「さ、次、行きますよ。」


そう言って先を進む山野君の背中を追う。
いつだって肝心なところははぐらかされる。



きっと今日は水族館がメインじゃないんだと思う。
私と外で会うことが目的で、場所はどこでも良かった。
だから彼が選んだ場所は、二人の家から近い水族館。


デートスポットで人気のあるこの場所でただ一緒に過ごしたかっただけなんだろう。
彼はこの綺麗な魚達に興味はなさそうだから。




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