空の青はどこまでも蒼く
「お腹空きましたね。お昼にしましょうか?」
「そうだね、何食べる?」


一通り水族館の中を見回り、魚に興味のない山野君は早々にもその場を後にしたかったようだ。


「ねぇ?今日、どうしてここだったの?」
「どこでもよかったんですよ、石田さんと出掛けられるなら。」


やっぱり。
そうだと思った。


「何それ?」


口では憎まれ口は叩いていても、心はグッと温かくなり、足取りは軽くなった。


軽く昼食を済ませ、次は何処に行くのかと尋ねれば、


「石田さんの家に行っても良いですか?」
「え?ウチ?」
「はい。」
「どうして?」
「二人っきりになりたいんです。」


彼のその言葉に私の心臓は一気に跳ね上がり、鼓動は早鐘を打った。



『二人っきりになりたい』と、言われて即座に答えられなかった。
一夜を共にした仲なんだから、家に来るくらいなんてことはない。


けど、今回は違う。
私の気持ちが、何て言っても違う。


「ダメなの?」


不意に使われたため口にドキリとする。


「ダメじゃないけど・・・」


私が否定さえしなければ、後は山野君が事を運ぶ。
彼が、『じゃ、行きましょう。』そう言うのを待って、その言葉の先を濁す。


けど、ただ私を見詰めるだけの山野君は何も言葉を発さなかった。
その悲し気な瞳に引き込まれそうになった。


「わかった。行こう。」


私は意を決して、私のマンションを目指した。




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