空の青はどこまでも蒼く
「どうぞ。」


マンションに着いて、鍵を開け、ドアを開けて中へ通す。
きっと、今日は山野君はこれから一切の決断を私に任せるんだろう。


彼が私に触れようとして、もし私が拒めば、彼はその先には進めないだろう。
昨日までの強引さを封印し、彼は私に最終決断を委ねたんだ。


『俺の気持ちは十分伝えましたよ。後は石田さん次第です。』


そう言われた気がした。




リビングに通して、ローテーブルの前に座らせる。
あの日、二人で朝を迎えたあの日とは全く違うシチュエーション。


ほんとはあの日の方が、おかしなくらい緊張して、パニックになってもおかしくない。
けど、今、山野君のために飲み物を入れる手が、僅かに震えた。



「どうぞ、飲んで。」
「ありがとう。」


張り詰めた空気が流れる。


カラン


氷の溶ける音が自棄に耳に障った。


「亜美さん・・・・・」


初めて下の名前で呼ばれた衝撃。


「ど、どうしたの?馴れ馴れしいよ。」


心の動揺を隠そうと茶化してみる。


「あみちゃん・・・・・」


敬称が変わり、さらにドキリとした。


「何?どうしたの?急に。」
「・・・・・石田さんの中から、本当に俺、消えちゃってるんですね。」


え?どういうこと?
やっぱり私達は過去に会ったことがあるの?


今までとは違った意味で心臓は高鳴り、肩で息をしているのが自分でもわかった。


「ほんとに、どういうことなの?やっぱり私達、過去に会ったことがあるの?」


私は山野君に詰め寄る。


「いいんですよ。今日は楽しかったです。俺、帰ります。」
「ちょっ!!待ってよ!」


どうして?
どうしてこうなるの?

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