空の青はどこまでも蒼く
「ねぇ、有希。山野君とどういう知り合い?」
「あぁ、亜美は知らないんだね。営業部と秘書課ってよく飲み会するのよ。」
「へぇ~そうなんだ。」
「まぁさ、企画部にも飲み会があったとしても、行かなかったでしょ?彼氏持ちだったんだから。」



そう言われて、また思い出す。
3年間、飲み会に誘われても行った試しがなかった。
部の忘年会や新年会、歓送迎会には顔を出したが、課を跨いでの飲み会と言う名のコンパには顔を出してなかった。


営業部は男性社員の花形。秘書課は女性社員の花園。
お互いがお互いを意識するのもわからなくもない。


「で、そこで知り合ったの?彼と。」
「そうそう。彼、イケメンでしょ?モテるんだよねぇ。」
「そうでしょうね。あれだけの面しててモテなかったら相当性格悪いんだね。」
「ねぇ、さっきから思ってたんだけど、亜美、山野君と何かあんの?」


有希の言葉にドキリとした。
彼とは何もない。
ただ、初めてエレベーターで乗り合わせ、声を掛けられただけだ。


「何もないよ。初めて会ったしね。」
「ほんとにぃ~?」
「何よ?」
「だって、山野君、私に話し掛けるとか今までなかったもん。飲み会で顔見知りにはなってたけど、話したことなかったんだよね。それなのに・・・」


有希の話はこうだ。
飲み会で顔は会せど、人気のある山野君と話したとこはなかったと言う。
それなのに、いきなり話し掛けられ、私のことを聞いて来たと言う。
昨日、私に何かあったのか?と。


「だから、私、てっきり二人は顔見知りだと思ったんだよね。」


有希はあっけらかんと言う。
私は彼のことを知らなかった。
今日、あのエレベーターで乗り合わせるまでは。
エレベーターの中で乗り合わせたというだけで、顔見知りになったわけでもない。


なのに、どうして?
彼は私のことを知っているの?




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