空の青はどこまでも蒼く
アメリカへ渡った亜美は直ぐに周りの子達と仲良くなるも、やはり言葉の違いと日本人だと言うことで、差別されたこともあったと言う。

日本で居れば、その都度、山野君が助けに入ったんだろう。
けど、アメリカには山野君は居ない。


亜美の心は蝕まれ、幾度となく意識を失って倒れたと言う。
突然その場で倒れたり、過呼吸になったり。

見てるおば様の方が辛かったと言う。
その度に山野君の名前を呼ぶ、小さな亜美に、おば様はどうしようもに虚無感に襲われたらしい。


そこでおば様達が取った行動が、『催眠療法』
アメリカは心理学の先進国。

『催眠療法』が一番の最善策だったと言う。
どういう治療を経て、亜美が山野君を忘れ、泣き虫だった彼女が、強い女と言われるまでになったかは、私には図り切れないけど、亜美の中から山野君が消えた理由がわかった。


彼女の意志で山野君を記憶の底へ追いやったわけではない。
10歳の彼女に与えられた最善の策だったんだ。


「日本に戻って来ても、亜美の記憶は戻らなかった。そんなにもキツい催眠療法だったんですか?」
「私達もね、こっちに戻って来て、まさき君のことを思い出させても良いかなとは思ってたの。けど、まさき君にだって彼の人生があるだろうし、亜美にも亜美の人生がある。もし、二人の人生が重なり合う時があるなら、それはまた運命なんだろうって。その時には亜美自身の記憶が呼び覚まされるんじゃないかって思ってたの。けど、甘かったのね、私達。」


運命の歯車は18年前から止まることなく回ってた。
それが18年経った今、しっかりと噛み合ったのに、亜美の歯車だけがズレて回ったことで、二人の歯車はキシキシと音を立てて軋んだ。


その軋みに、山野君は耐えられなくなったんだ。
18年、想い続けた亜美の記憶の中に、自分が居ないことが耐えられなかったんだ。



亜美が悪いわけでも、山野君が悪いわけでもないのに・・・・・

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