空の青はどこまでも蒼く
9
亜美とエレベーターに乗り合わせたあの日。
エレベーターに一人乗る彼女を見て、俺は今がチャンスだと思った。
俺の鼓動は早鐘の如く打ちつける。


降りる階まで、たった数秒。
俺には何十年にも感じた。
この18年、亜美を想い、ひたすら亜美に恋い焦がれ、亜美を欲した。


その彼女と同じ空間で二人っきり。


振り向かないで亜美に話し掛ける。


けど、やっぱり亜美を俺のことを覚えていない。
どうして亜美の中から俺は欠如したんだ?


俺は機会をみては亜美に言い寄った。
きっと彼女はウザい男だと思っただろう。


4つも年上の彼女に強気な態度で接する。
彼女は口では拒否を示していても、身体は自然と俺の言うことを聴いていた。


昔のように、俺が泣くなと言えば泣き止む。
そんな風に彼女は、携帯を貸せと言えば、躊躇なく俺の手へと渡して来た。


やっぱり彼女の奥底に俺が居るんだと思った。


時間と空間を共にすればするほど、彼女への気持ちは募って行く。
こんなにも近くに居るのに、ずっと遠くの方にいる感じ。


周りの誰もが俺達が付き合っているとさえ錯覚するほどに、接近した俺達の関係に、俺の心は蝕まれて行った。



屈託なく笑うその笑顔は、亜美そのもので。
けど、本当ならお前は俺のことを「ましゃき」って呼ばなきゃなんないんだよ。
もちろん、大人になった今、お前は俺の名前をしっかり呼べるだろう。
『将樹』って。


なのに、お前は俺を「山野君」と呼ぶ。
その心の距離が、この18年、お前を探し続けた俺にとって、こんなにも近くに居ても癒されることはなく、どんどん地の底へと追いやった。


俺を、俺を思い出してくれ・・・・・


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