空の青はどこまでも蒼く
魚を見ることが目的じゃない。
俺を思い出さすことが目的だ。


水族館を出たところで、空を見上げれば、あの日と同じ、抜ける様な蒼さの空だった。



「ねぇ?今日、どうしてここだったの?」



亜美のその言葉に俺は落胆する。
ここに来て、この空の蒼さを見ても亜美は思い出さない。



「どこでもよかったんですよ、石田さんと出掛けられるなら。」



と言えば、「何それ?」と言いながらも嬉しそうな顔をした。
こんなことで嬉しそうにする亜美の顔を見たいわけじゃない。


俺をちゃんと「やまのまさき」と認識し、そしてその笑顔を俺に向けて欲しい。
俺は彼女の家に行きたいと言った。



初めて彼女の家に行った時とは違う緊張。


あの時は、ただ傍に居られることが嬉しかった。
その寝顔にそっとキスを落とした。


身じろぐ亜美を可愛いと思った。
そのまま、この腕に収めてしまいたいと思った。


けど、俺は俺の心にブレーキを掛け、その細い身体を抱き締めて眠った。
(亜美はまだ、俺を俺だと思ってない・・・・・)



テーブルを挟んだ向こう。
俺が大好きな亜美が居る。
手を伸ばせば届くその距離に、つい手を伸ばしてしまいそうになる。



「亜美さん・・・・・」



そう呼んでみた。
反応は変わらない。



「あみちゃん・・・・・」



あの日に戻りたくて、あの日の亜美に会いたくて、あの日のように呼んだ。



何も変わらない亜美の反応に、俺の心は悲鳴を上げ、ガタガタと音を立てて崩れ落ちた。




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