空の青はどこまでも蒼く
太陽の光が逆光で、山野君の顔がよく見えない。
一歩、一歩、私に近づくその影は、次第にその顔をはっきりとさせていく。


山野君のその顔は、いつもの余裕のある顔じゃなくて、今にも泣き出しそうな顔をしてた。


「山野君・・・・・」


もう一度声を掛ける。
私の問い掛けに、彼はゆっくりと口角を上げて、上手に笑えない子供のような顔をした。


子供の・・・ような・・・・顔をした・・・・・




「あみちゃん・・・・・」


目の前まで来た山野君がその手を差し伸ばして私を呼ぶ。


「あみちゃん・・・・・・」


何かを握っている手を私に差し出し、その差し出されたその手に、私の手がゆっくりと伸びる。
私の掌に山野君は自分の手を置くと、私の手の中に何かを置いて、ゆっくりと手を離して行った。


私の掌に残されたモノは・・・・・


透き通る蒼のイルカのキーホルダー。


私の、キーホルダーを乗せられた手が震える。
見覚えがある。
私の記憶の中に、このイルカのキーホルダーはある。


どこだろう?
私の記憶のどこに、このキーホルダーはあるんだろう?


メソメソと泣く女の子が居る。
誰?その泣いてる女の子は?
どうして泣いてるの?
折角、そんなに綺麗なキーホルダーを貰ったのに。


空を見上げれば、突き抜けるような青さの空だった。


あなたは誰?
どうして空を指差してるの?
顔がよく見えない。
何て言ってるの?聞こえない。



目の前の山野君の口が動いた。

< 60 / 67 >

この作品をシェア

pagetop