空の青はどこまでも蒼く
小さい頃、私はよく泣く子だった。
いつからか強い女と呼ばれるようになったけど、10歳くらいまではメソメソトよく泣く子だった。


そんな弱い私の傍に、いつも居てくれた男の子が居た。
私より幾分か年下の、綺麗な顔をした男の子。


私が泣けば、すぐ傍に来て慰めてくれる。
同級生から虐められれば、すぐに助けに来てくれる。


そう、あの綺麗な顔をした男の子は、紛れもなく、山野君だ。
私の記憶の断片が次々に繋がり始めた。




小学3年生になる年、父の転勤でアメリカに行くことになった。
私は7年間、アメリカで育った。
幼い私の心は異国の地へ行くことに不安が募り、今にも押し潰されそうになっていた。


あの日も、水族館で楽しいひと時を過ごすはずのあの日も、俯き泣き出しそうになる私に、まさきは私の傍に居て、こう言ってくれた。


今日のように、突き抜けるような青空を指差して、まさきは言った。


「あみちゃん!おそらの青はどこまでも蒼いんだよ!だからげんきだして!これをぼくだとおもってね!」



そして渡されたこのイルカのキーホルダー。
アメリカに行った私の唯一の心の支えだった。


それでも慣れない異国の地での生活は、私に大きな負担を掛けた。
唯一私の心の支えの、まさきはもう居ない。
私の心は次第に壊れ、幾度となく倒れた。
過呼吸にもなった。



そんな私を両親は不憫に思ったんだろう。
泣く度、倒れる度、呼び続ける、まさきの名前。
きっと、見てる母達の方が苦しかったんだと思う。



私は真っ白な天井を眺めさせられ、深い眠りから覚めたその時、私の中から、まさきは消えていた。
あれから18年。
私の記憶の底のまさきは一度も顔を出さなかった。

< 63 / 67 >

この作品をシェア

pagetop