空の青はどこまでも蒼く
空を見上げる度、私の心は落ち着いた。
あの広がる蒼を見るだけで、波立つ心が、撫でるように静まって行く。


それがどうしてかは全くわからなかったけど、私は空を見上げるのが好きになった。


日本に戻って来てからは、高いビルの隙間から見える空を眺めるだけで、心の底が疼くこともあった。
けど、何が私の心に働き掛けているのかわからず、ただ日々を遣り過していた。


あの日、初めて山野君にエレベーターではなく、屋上で会っていたら、
私は彼を思い出したんだろうか?


彼の言葉に身体が勝手に反応するのは、遠い記憶がそうさせてたんだろうか?





抱き締められている彼の腕が僅かに震える。


「山野君・・・ううん、将樹?私、また、あなたの傍に居ても良いの?」
「あんな酷いことしたのに、良いの?」
「酷いことか・・・私の方が将樹に酷いことしてたよね。思い出せなくて、ごめんね。」


私の瞳からは堪え切れなかった涙が頬を伝う。
将樹はゆっくりと私を離し、頬を伝う涙をその温かい指で拭った。


「泣かないで。亜美ちゃんが泣いてると、俺の方がツラくなる。」


額と額を合わせて、その瞳で私を見詰める。


「亜美ちゃん、俺、ずっと亜美ちゃんのことが好きだった。亜美ちゃんと離れてからも俺はずっと亜美ちゃんが好き。」
「わ、私は・・・・・エレベーターで声を掛けられた時から、きっとあなたに惹かれてた。彼に振られた次の日なのに、それなのに、心はあなたに持って行かれた。」
「俺、悪いヤツだね。」


クスリと将樹が笑った。
その笑顔に私も釣られて笑う。


今まで見た中で一番綺麗な笑顔。


「けど、俺は物心ついたその日から、亜美ちゃんに、心、持ってかれてるんだけど?もう、20年以上?亜美ちゃんが好きだよ。」


ストレートに言われるその言葉に、胸の鼓動が早なる。



「18年もブランクがあるけど・・・・・私も将樹が、好き・・・」




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