永すぎた春に終止符を
彼は、私のほんの目の前までやってきた。
手を伸ばそうとして、私の痛々しい姿を見て、彼は一瞬ひるんだ。
私は、彼に再会できたことより、彼の姿に目が行った。
ビジネススーツにきちんとカットされた髪。
顔を見れたときの感動なんて、どこかへ吹き飛んでしまった。
「どうしたの?その格好」
私の言葉に拍子抜けしたように、彼は一瞬、魂の抜けたような顔になった。
何度見ても、拓海はビジネススーツに身を包み、長かった髪は短くカットされている。
ご丁寧に革靴まで履いてる。
「ああ、面接だった。無事に受かったよ。もう、来月から働くよ」
「どういうこと?」
怒りがふつふつと湧き上がってくる。
私は、腕が元気だったら、拳固の一発でもお見舞いしたいくらいの勢いで拓海に突っかかった。
保田さんが、止めてくれなかったらきっと体当たりしてただろう。
「何ていうことしてくれたの!!会社で働くって、大学はどうするの!!」
怪我しているのを忘れて、私は拓海に食ってかかる。
「がっかりさせてごめんな。そんなのとっくに辞めてるさ」
「バカ!!死んじゃえ!!大嫌い」
「梨沙、止めろ、落ち着けって…」
保田さんが必死に止めてくれて、看護師さんにたくさん怒られた。