永すぎた春に終止符を
「こっち見て。梨沙、これからいう事をよく聞いて。
俺、今回のことでよくわかったんだ。

君はただの恋人じゃなくて、誰よりも大切な人だって。

だから君は自分の友達に遠慮したり、
俺の事先回りして避けるようなこと今後絶対にしないでくれ。

君の代わりはこの世にいない。いいね?」


「拓海…だって、子供の頃からの夢でしょ?ねえ、私が結婚したいって言わなきゃいいでしょ?
そうしたら、拓海は大学で好きなだけ研究が出来る」


「もう、遅いよ。教授に就職自分から頼んだし。そんなことどうでもいいんだ。

まあ、俺は、親父と同じように大学で研究したいって思い込んでただけで、研究する場所なんか何処でもいいんだ。

君と離れて、一人になってみてそう思うようになった」

「拓海…」


「それに、君の夢は、俺のと違ってどこかに埋もれさせていい夢じゃない。
俺の形だけの夢の為に、もっとも自分にとって大切なものを見失うところだった。

俺、梨沙のためなら変わることが出来きるよ。

スーツに満員電車だってたいしたこと無い。
今はねえ、俺は自分の夢でさえ、梨沙に結びついてるんだ。
俺は、自分のしたい事を仕事にして梨沙と生きて行きたいって。

君が側にいてくれたら、仕事なんか、どんな形でもいい。

だから、大学を去ることが、君の為に何かをあきらめたとは思わないで欲しい。

俺、君が毎日お帰りって言ってくれて、毎日君の横で朝を迎えられたら、ほかの事なんてどうでもいいんだ。
だから、もう遅いなんて言わないで」

拓海の目が潤んで、目が赤くなっていた。

私は、泣きはらして、顔がぐちゃぐちゃでひどいことになってた。


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