永すぎた春に終止符を
終章
「いい眺め」拓海がじっくり観察してから言う。

「前がスースーして最低」

無事に検査を終えて、今後の生活に影響はなさそうだと医師に判断されて、私は自宅に戻った。

打撲して内出血の跡が少しは消えないと、会社には行かれないから、もうしばらく自宅待機が続く。

私は、着ているTシャツを脱いで、自分で着替えをしてみると彼に言ったところだった。


「いや。手伝わなくて言い。ほっといて、自分でやるから。触らないで」


「その腕で、どうやって」

Tシャツの端をつかめない私の手元を、彼は、高みの見物のようにしてみてる。


「何とかする」
シャツの端を捕まえられても、途中で胸の辺りで引っかかってうまく行かない。


「ふ~ん」

私は、カニのハサミのように固定され、三角巾で吊るされた両腕を、何とか体に近づけようとして格闘していた。

ひびが入っただけの左腕は、何とかなりそう。

「あっ、もう」
苦労して持ち上げたのに、一瞬で滑り落ちる。


「そのままでいろよ。いいじゃん、誰も来ないし、どうせ家の中だ諦めろ」

拓海は、私がお願いと彼に介助を頼むのを待っている。
怪我をして、両方の腕を固定されてるから、自分では何も出来ない。

本当に、下着一枚つけられない。



「貸せ、脱がしてやる」

「いや。すぐやらしいことして、着替えが出来ないもん」

「仕方ないだろう、何週間も方って置かれて。このままずっと何も着ないでいてくれてもいいくらいだ。そうだ、いっそのこと裸でいろよ。俺、そのほうがいいけど」

昨日は、一日ブラなしで彼のTシャツを上から着ていた。
刺激が強すぎて、彼は私から離れなくて鬱しいくらい近くにいる。

「これ以上、あなたの妄想の餌食になるのは、嫌」

「いいから、おいで」
彼は、私を引き寄せると、シャツが引っかからないように腕を通して脱がせた。


「ほら、天使の羽、これでいいか?つけてやるから、後ろ向けよ。寄せてあげるんだろ?ちょっと待て、逃げるな。外すのより興奮するなこれ」

「いつまでやってるの、変態」

「ふ~ん、やっぱ、こんなのいらないか」

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