永すぎた春に終止符を
「そこからって?」
「だって、頻繁に会うには話を聞く理由がいるだろう?」
「頻繁にって…」
「言葉を変える?付き合ってもらうには…とか」
この人、私に自分の子供を産ませたいって…
「いえ…ちょっと、それはまだ考えていません」
簡単にはいって言ったら、妊娠させられたりして…
逃げよう。
「ちょっと待って。今すぐそんなふうに聞いたりしないから。だからね、会って話をするのに、理由がいるってこと」
「あの…私、失礼します」
強引過ぎてついて行けない。
「立たないで、座って。まだ、ビール一口飲んだだけじゃないか。何でもいいんだ。誰の意見聞きたいとか…ただ、話を聞いて欲しいとか…」
安田さんは、身を乗り出してきた。
「話って言われても…」
逆に梨沙は、後ろに下がって距離を保つ。
「じゃあ、時間切れ。何か食べに行こうか。何がいい?」
「これからですか?えっと…」
「これから?終電なくなるよ。もちろん俺はそれでもいいけど…君、自分で言った意味わかってる?」
保田さんは、優しく笑いかけ、
「今日は止めておこう。俺も心の準備が出来てない」
「ごめんなさい…そういう意味じゃないです」
「わかってるって。それで、嫌いなものは?」
「別にありません」
「わかった。じゃあ、明日出かけよう。とりあえず…携帯貸して」
「ええっ、はい…」
「何にするかはその時まで考えておく。それから、迎えに行くから住所教えて…」
「えっ?ちょっと待ってください」
手を伸ばして携帯をとろうとして、ひょいと届かない位置に持ち上げられた。
「と言っても、もう登録しちゃった。すでに事後報告だね…」
「安田さん、ちょっと待って…」
「大丈夫。付き合ったらゆっくり進めるよ。とりあえず、今日はすぐに家に帰って早く寝よう。明日迎えに行くから、今日はもう帰って寝たほうがいい」