永すぎた春に終止符を
取りあえず付き合わない?
保田さんとは、帰りの方向が同じで、同じ彼は電車で帰ることになった。つり革につかまって、私がよろけそうになると腕をつかんで支えてくれている。
「俺の住んでるとこ、君の駅の3つ手前だ。案外近いかな」
「あの…もう、保田さんの駅ですね。ありがとうございました」
「梨沙の家って、駅から何分くらい?」
「10分もかかりませんから。気にしないで下さい」
「だめ。家の中までは入らないけど、今日は家まで送る」
「大丈夫です。本当に」
と言っても、聞いてくれず保田さんは
部屋の前まで送ってくれた。
そして、今、彼は、こうしてドアの前で立っている。
「梨沙…ちょっと待って」
彼に背を向けた時、ふわっと後ろから抱きしめられた。
軽く耳たぶをキスされ、いきなりぎゅっと抱きしめられて「好き」っていう言葉をささやかれた。
「保田さん…」
「今日は、このくらいにしとくよ。明日部屋まで迎えに来る。じゃあね」
何なの…今の…
ドキドキした。
急に抱きしめられたりして…