永すぎた春に終止符を
前に、結菜ちゃんから、保田さんは元々、トップクラスの営業マンだったと聞いた事がある。
今は企画課に籍を置いていて、営業のように数値で表されることはないけど、彼は私から、聞きたい情報と約束を取り付けた。成る程、営業成績もよさそうだろうなと納得した。
それにしても、
何だったの…あれは…
部屋の中に入っても、しばらく心拍数がはね上がったまま、触れられたところが火照ったままだ。どうしちゃったんだろう。
拓海と別れたばかりだっていうのに、心臓が飛び出すかと思うほど、脈打ってる。
拓海以外の人に、抱きしめられて、ドキドキするなんて…
私の体、どうしたんだろう…
もう拓海のこと忘れてるんだろうか…
そんなに簡単に四年も付き合ってた相手を忘れられるのだろうか。
でも、ぴんとこない。拓海以外の男性に抱きしめられるなんて。
保田さんは、年上らしく私が気を回す前に、先に考えておいてくれる。一緒にいると楽だ。私が考え付く頃には、彼の中で結論が出ている。
私は、何も考えずに彼に従っていればいい。
誰かに見られてたのかと思うほど、タイミングよく電話が鳴り出した。
電話の主は、保田さんではなかった。