永すぎた春に終止符を
ピンポン
と、ドアベルの音…
朝の10時…ん? 宅急便のわけないか。
そんな…
ええっ!もう来たの?
と考える間もなく、インターフォンから保田さんの声が聞こえて来た。
ーごめん、ちょっと早かったかな
そりゃ、早いだろ…
遠くに行くなんて聞いてないし。
ええっ?
「どうぞ…」
朝の10時が、特別早いわけじゃないけど…昨日の今日だから、頭がはっきりしていない。
短めのグレーのジャケットに紺のズボンをはいた保田さんが玄関に立っていた。
なんて朝から爽やかな…
普段のスーツと違って、眩しいくらいに明るく見える。
「中に入っていい?」
「はい。すみません。まだ出かける支度が出来てなくて」
「俺は、構わないよ。かえって部屋に上げてもらえてラッキーだったな」
キチンと部屋の中片付ける間がありませんでしたが。
保田さんは部屋の中をさっと見渡すと、
「やっぱり、女の子らしい飾り付けの少ない、さっぱりした部屋だな」
「そうですか。保田さん、私がそういうメルヘンチックな部屋に居たらなんて、一ミリでも考えたんですか?」
「いいや」
「えっと、飲み物用意しますね」
「長居してほしい?」
私は、首を横に振る。
「じゃあ、いいよそんなの。それより部屋ン中見てていい?」
保田さんは、進めた椅子には座らず、部屋の中を歩き回る。
ちゃんと時間を決めていなかった方もいけなかったし、私も、用意してすぐに出かけられるようにしていればよかった。
彼のことをよく知らないうちに、保田さんを部屋に招き入れるのは、あまりいいことではない。
こんなところ、拓海が見たらなんて思うかなと思って、はっと気が付いた。