嘘キス。
【孝】
走ってきた彼女を強く抱きしめる。
「先輩、ごめんね……?」
「ううん。行こうか」
差し出した手を握ってくれる彼女。
「……先輩どうしたんですか?」
「…ん?何が??」
「なんだか、変な気がして……」
何でもないよ。と笑ったら君は笑い返して俺の手を強く握る。
ねぇ、
その赤らんだ頬は、俺のために走ってきてくれたってことでいいんだよね?
その潤んだ瞳は、あくびをしたって信じたい。
でも、その二つ空いたボタンから除く赤い跡はなんて理由をつけて逃げようか……。