嘘キス。
「……遥に遠慮なんかしなくていいと思うけど。」
俺は遥の彼女さん……________逢瀬 愛理に対してそう口を開いた。
「別に遠慮なんてしてない。……本当にここでよかったのよ。」
「ふーん。……遥と付き合えて幸せ?」
「当たり前じゃん。…あんたこと紅葉ちゃんと付き合えて幸せでしょう?………邑楽 孝くん。」
仕返しのように呼ばれたフルネームに思わずクスッと笑が零れる。
俺…、邑楽 孝の彼女「紅葉」と
彼女…、逢瀬 愛理の彼氏「遥」は
兄妹だ。
互いの家にお邪魔した時にたまたま顔を見合わせ、その存在を知った。
……まぁ、遥と付き合ってるなら恋愛に対して不自由は無さそうだし
優しいから、逢瀬優先させてくれるんじゃないかな。
俺も、紅葉優先にすれば
浮気もやめてくれるかもしれないけどな……。