さくら色した君が好き
昼休み。
お弁当を食べ終わって
友達とダラダラしていると
「やまむら―。おきゃくさーん」
お調子者の男子に呼ばれて、私はその男子の背中をパシッと叩き教室の外へ出ると
「アンタ山村だっけ?名前変えた?親が離婚した?」
廊下で待ち構えていた
制服を着崩し
眉毛の細い3年女子が私に聞く。
「いえ、加藤紅葉(かとう もみじ)で変わってません」
小さくなって私が言う。
紅葉という名前がアレなんですわ。
2時間サスペンスドラマによく出て来る
丸い顔した女優さんと同じ名前で、私はふざけて『山村』と呼ばれていた。
ちくしょー。
いや
別に山村紅葉さんに罪はないんだけどね
嫌いじゃないんだけどね
なぜか悔しい。
「まぁ何でもいいんだけどさ」って
怖い顔した3年女子は荒々しく詰め寄り
壁ドンされる私。
怖っ。
先輩、眉毛細すぎ。
廊下にいたはずの同級生がサーッと引きまくる。
いやこれ
カツアゲされてるワケではありません。
「バスケ部に入れ」
細く鋭い声が怖いです。
「すんません。運動部はダメなんです」
もう許して下され
カンベンしてください。