さくら色した君が好き
「もみじー」
息を切らして胡桃がやってきた。
「そんじゃ先に」
山村君は胡桃に目もくれず、先に行ってしまった。
珍しいパターンだな
胡桃がこっちに来たら
普通は残って
胡桃と会話をするのが普通だと思ってたのに。
ぼーっと後姿を見てたら
「何を話していたの?」
責める口調で言われる私。
「別に……音楽の話」
「紅葉は山村君と仲がいいの?」
「同じクラスだよ。胡桃も知ってるの?」
「生徒会で会計やってる内川君の親友で、たまに生徒会室来るもん。ねぇ本当に音楽の話だけ?」
ずいぶんツッコむなぁ。
「それだけだよ……」
正直に答えると「よかった」って細い肩を落とす。どうした?
「私、山村君が好きなの。だから紅葉は邪魔しないでね」
「えー?」
毎日
家で会ってるのに
こんな生徒玄関でカミングアウトかいっ!
そして胡桃が山村君を好き?
ぜんっぜんわからんなかった。
いや
あんた
あちこちから告られて
全部ことわってて
山村君だったの?