さくら色した君が好き

ズルズルとイスを引いて座ると、胡桃が咳き込んだ。
お父さんとお母さんの胡桃センサーが敏感に反応し、心配そうな4つの目が胡桃を刺す。

「昨日も咳が出てたよね。今朝は送って行こうか」

「そうね。お父さん悪いけど送って行ってくれる」

過保護とも見える両親だけど
胡桃は身体が弱くて
激しい運動もできず、すぐ熱を出して病院のお世話になる事が多い。

『紅葉が私の健康を吸い取って生まれてきたかも』って、熱を出すたび冗談まじりに言われて

『いやー失礼だねー』って、笑って胡桃に反論するけど
心の中では
『そうかもしれない』って泣いてる私。

私と胡桃は双子だけど
胡桃は賢くて
イケメンで品の良い
お父さんのDNAを受け継いた可愛い女の子。

私は体育会系の単細胞
お母さんのDNAをしっかり受け継いでいる。

それは仕方ないとして
雪ってなによー!
もう4月の下旬なんですけど。
春でしょう!
いくら北海道ってもこの時期にどーよ。

春休みに近所の農家でバイトして、ネットで買った白のパーカー。
予約販売の品物がやっと昨日届いて
今日デビューしようと思ってたのにぃ。

ほっぺた膨らませてサラダを食べてると

「私も自転車で行きたいなぁ」って胡桃が溜め息交じりにそう言った。

台所から届くお母さんの視線が痛い。

はいはい。わかってます。
私が『チャリで行く』って言ったから悪いんでしょう。
身体の弱い胡桃を気づかわなきゃいけないんだよね。
気の利かない姉ですんません。
< 2 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop