空って、こんなに青かったんだ。
六月も後半なると梅雨入りとなり、しばらくすっきりとしない日々が続いた。
そんな中で英誠学園の野球部グラウンドも最後の追い込みとなってぬかるんだダイヤモンド、そして外野の芝生の上で選手たちの気合もひとしおとなっていた。
三日後が夏季大会の抽選会だ。それに合わせて今日はいよいよ背番号の発表である。
高校球児にとって最大かつ最上の目標であり憧れでもある夏の甲子園、この出場権をかけた地方予選が始まるのだ。ガチガチのレギュラーでも緊張の日だ。
ましてベンチ入りの当落線上にある選手たちにとっては身を引きちぎられる思いの日、なのだ。
今日は普段より少し早い六時に練習は終わり、そのあと部室に移ってから、背番号が渡される。だからどこか練習もうわの空、なのだ。
スコアーボード後方の大きな時計が六時に近づいた頃、ブチョウ先生、いやいや、もうすでに正式には監督、なのであるがいまだに選手たちはブチョウ先生、と呼んでいたのだ、が、啓太に声を掛けた。
「金子、全員を上がらせて部室に集合させろ!」
啓太は大きな声で返事をするとすぐに全員を集めた。そして整理運動を終わらせた選手らちが全員、部室に集まったのは六時二十五分だった。すでにマギラワシイケド、ブチョウ先生と実際にサインを出すカントクサン、は椅子に座っている。
「これからベンチ入りメンバーの発表と背番号を渡す。名前を呼ばれた者は小島監督から背番号をもらうように」
椅子から立ったブチョウ先生が黒板を背にしてそう伝えた。いつもの眠そうな気怠さはミジンモない。いよいよだ。
県大会のベンチ入りは二十人、この二十人に入ること、入るために選手は苦しい練習に耐えるのだ。耐えてきたのだ。今までの苦労がこの一瞬で報われるか?報われないのか?
まず、エースナンバー、1、からだ。
星也はこの1、を誰にも渡さない、絶対に拓海にも渡すまいと思って練習に励んできたのだ。新しい変化球も取得して。
ブチョウ先生がまず、背番号1を、カントクサンに手渡した。そして呼び上げた。
「一番、川津星也!」
みんなから一斉に拍手が起こった。そう、これは英誠学園野球部の伝統だ。誰かが背番号を受け取るとき、皆が拍手をするのだ。
もらえたものも、もらえなかったものも、恨みっこナシ、ラグビーで言うとこの、「ノーサイド」ってことだ。そうそう、ここでもうひとつ。
あんまり野球に詳しくない人のためにね!セツメイ!
ここの「一番」っていうのは背番号のことで、ケッシテ打順、じゃないんだ。
全国大会、つまり甲子園ではベンチり出来る選手は十八人なんだけど地方大会、つまり都道府県の予選は二十人、ベンチに入れるってとこが多い。
今はその二十人に与える背番号の「授与式」なんだ。だから当たり前なんだけど打順はその都度その都度、試合の前に決められて発表となるんだよ。
そしてもうひとつ、つけ加えると高校野球の場合はポジションで背番号が決まる、ほとんどの場合。
ざっというと、ピッチャーが1、キャッチャーが2、そのあと内野手から時計の反対まわりに一塁手が3、二塁手が4、三塁手が5、ショートストップが6。
エッ?って思う?そうそう、ここがちょつと紛らわしい。だってショート、って時計の反対まわりで言うなら5、ダヨネ?でもって、三塁手が6、になるはずだって思う人もいるんじゃないかな?
でも、ショートが6、でサードが5.これでいいの。
実はここには野球の長くて古いレキシ、があるんだよ。
それをチョッと話すとね、それは野球、つまりベースボールがクリケットというスポーツから枝分かれして発展したもの、って言われてて、千八百年代のことなんだけど、ベースボールが始まったころは内野手はみな、それぞれのベースに「付いてた」らしいんだ。
つまり一塁手はファーストベースについてて、二塁手はセカンドベースについてて、って感じで。
そして当たり前に三塁手はサードベースのつく、で問題のショートなんだけど正式にはショートストップと言って、当時はピッチャーとセカンドベース、つまり二塁手の間にいたらしいんだ。
そのころは投手は投げるだけ?みたいで二塁手が取る前に取る?みたいな役割、だったようなんだ、ショートって。
だけどいつの頃からか、誰かが考えたんだろう、そんなことよりももっと効率的?つまり相手のヒットゾーンをクマナク?狭めるにはどうしたらいいんだろう?って。
それで考え出されたのが今の守備陣形でいつの間のかそれが最も効率的な普遍的な守備体系になったらしい、のだ。だから三塁手よりも右にいるショートが6、なんだ。そんなわけ。
じゃあちょっと話が横道にそれちゃったのでまた元の戻して背番号の発表に戻ろうね。
「二番、龍ヶ崎勇士!」
まあ、これは当然、カントクサンも勇士以外の捕手にはほとんど何も教えていない、勇士と心中、のケハイだから。当の勇士も至極当然に背番号をイタダク。続いて三番は?
「平山健大!」
これもガチガチのレース。他に候補ナシ。
「四番、刀根護!」
右投げ左打ちの護は出塁率が高く上位打線に入ることほぼ間違いなしだ。守備にやや難があるもチームの中心のひとり。続いてブチョウ先生の声が。
「五番、松本亮太!」
小柄だけど小回りが利きバントの名手。守備も堅実でミスのない選手だ。
続いて・・・・
「六番、小林祐弥!」
例の濡れ衣事件で心配をかけたけどみんなのお陰でミゴトに復活!走攻守三拍子揃ったチームの要。このポジションもカントクサンはレギュラー争いはさせず、固定で本人の自覚を促す作戦に出たのだった。
そしていいよ外野へと発表は進む。ブチョウ先生の声がまたまた響き渡る。
「七番、杉山駿斗!」
お~、ついにレギュラー獲得!親父さんが
「同じ実力なら他の選手にレギュラーを!」
と旧知の仲のカントクサンに頼んだ件、みんなもオボエテルヨネ?
それだけ厳しい競争を勝ち抜いた駿斗は、リッパダヨネ!一時は親をウランだ?こともあったっけ?余計なことイウナ!ってね。まあ、メデタシメデタシ!
そしてセンターのポジションは?
「八番、稲森拓海!」
やっぱり、ここもガチガチだよね、うたがいようもなく・・・・
さあ、いよいよ最後のポジション、ライトだ。
「九番、久保田圭介!」
こころなしかブチョウ先生の声が大きかったような気がしたのはキノセイカ?もしかするとココまで、がいわゆるレギュラー、の背番号なので思わずそう聞こえたのかも知れない。
ヒトケタ番号をもらった選手はこれでひと安心だ。
ほぼスタメンは間違いなしだから。ブチョウ先生は次の十番を発表した。
「十番、金子啓太!金子にはひき続きキャプテンを命ずる!」
啓太は
「ハイっ!」
と元気よく返事をした。
レギュラー番号をもらえなかったということで悪びれることもなく、実にハキハキト元気よく、快活に番号を受け取った。
やはりこのチームのキャプテンは啓太しかいない、おそらく誰もがそう思っているはずだった。
そしてブチョウ先生は二十番までの背番号を言い渡しベンチ入り全員の背番号が決まった。
十九番と二十番は一年生の期待の新人が入った。
そして他は全員三年生が入って、結局二年生はひとりもベンチ入りしなかった。
年に三回あるイベント、そう、背番号授与式のうち、最大の催し物ともいえる夏季大会のベンチ入りメンバーが決まった。
だけど悲しいことがひとつあったのだ。三年生でひとりだけ背番号をもらえなかった選手がいたのだ。
英誠学園の三年生部員は全員で十九人。二年生部員のベンチ入りはなく一年生がふたり入ったからそう、ひとりあまってしまったのだ。
それはいつもスコアラーを主にやってくれている星康人だった。小柄で非力で既定の重さのバットをきちんと振り切ることさえ難儀にしてしまう選手だ。
しかし彼は三年間、厳しい練習を他の選手と同様に耐えてきたのだった。決して甘えることなく黙々と。
そんな康人のことを思ってか、三年生全員が今日は誰一人として浮かれる雰囲気がなかったのだ。
もちろん康人自身が十分に予期していたことではあろう、この結果は。だけどやっぱり人間だ、心の片隅でもしかしたら、という期待はまったくなかったといえるだろうか?
なので三年みんながやはり沈んでしまうのだ、ヤスのことを思って。
今日もいつもの通り駅前の餃子屋に立ち寄った。三年生全員でだ。
だけど話題はあっちへ行ったりどこかへ飛んだり、誰もが気遣いながら決して「そこ」に、つまり背番号だのベンチ入りがどうのだのという話題にまちがっても行かないように、恐る恐る話をしていたのだ。
たぶん、いやほぼ間違いなくヤスはスコアラー、正式には記録員というが、その役割でベンチには入るはずだ。でも当たり前のことだけど絶対に試合には出ることが出来ないのだ。
もう負けが決まって(そういう試合展開になったときに、高校野球では残念ながら明らかに力量が劣っているとわかっていても控え選手を出場させることがある)いてもどんなことがあっても、ヤスは試合に出ることはないのだ。
背番号をもらっていない、そう、彼は選手、ではないのだ。この辛さは野球をやったことのある者なら絶対に想像がつく。
またそうじゃなくてはならないのだ。
康人はいつもと変わらずにうまそうに餃子を頬張っていた。次から次へとパクパクと。いったいあの小さな体のどこに吸収されていくのかと思うほどに。
だからまわりのみんなもいつの間にか普段のバカ騒ぎとなっていき、店内はふつうの高校生の集まりと化していったのだった。
そんな中で英誠学園の野球部グラウンドも最後の追い込みとなってぬかるんだダイヤモンド、そして外野の芝生の上で選手たちの気合もひとしおとなっていた。
三日後が夏季大会の抽選会だ。それに合わせて今日はいよいよ背番号の発表である。
高校球児にとって最大かつ最上の目標であり憧れでもある夏の甲子園、この出場権をかけた地方予選が始まるのだ。ガチガチのレギュラーでも緊張の日だ。
ましてベンチ入りの当落線上にある選手たちにとっては身を引きちぎられる思いの日、なのだ。
今日は普段より少し早い六時に練習は終わり、そのあと部室に移ってから、背番号が渡される。だからどこか練習もうわの空、なのだ。
スコアーボード後方の大きな時計が六時に近づいた頃、ブチョウ先生、いやいや、もうすでに正式には監督、なのであるがいまだに選手たちはブチョウ先生、と呼んでいたのだ、が、啓太に声を掛けた。
「金子、全員を上がらせて部室に集合させろ!」
啓太は大きな声で返事をするとすぐに全員を集めた。そして整理運動を終わらせた選手らちが全員、部室に集まったのは六時二十五分だった。すでにマギラワシイケド、ブチョウ先生と実際にサインを出すカントクサン、は椅子に座っている。
「これからベンチ入りメンバーの発表と背番号を渡す。名前を呼ばれた者は小島監督から背番号をもらうように」
椅子から立ったブチョウ先生が黒板を背にしてそう伝えた。いつもの眠そうな気怠さはミジンモない。いよいよだ。
県大会のベンチ入りは二十人、この二十人に入ること、入るために選手は苦しい練習に耐えるのだ。耐えてきたのだ。今までの苦労がこの一瞬で報われるか?報われないのか?
まず、エースナンバー、1、からだ。
星也はこの1、を誰にも渡さない、絶対に拓海にも渡すまいと思って練習に励んできたのだ。新しい変化球も取得して。
ブチョウ先生がまず、背番号1を、カントクサンに手渡した。そして呼び上げた。
「一番、川津星也!」
みんなから一斉に拍手が起こった。そう、これは英誠学園野球部の伝統だ。誰かが背番号を受け取るとき、皆が拍手をするのだ。
もらえたものも、もらえなかったものも、恨みっこナシ、ラグビーで言うとこの、「ノーサイド」ってことだ。そうそう、ここでもうひとつ。
あんまり野球に詳しくない人のためにね!セツメイ!
ここの「一番」っていうのは背番号のことで、ケッシテ打順、じゃないんだ。
全国大会、つまり甲子園ではベンチり出来る選手は十八人なんだけど地方大会、つまり都道府県の予選は二十人、ベンチに入れるってとこが多い。
今はその二十人に与える背番号の「授与式」なんだ。だから当たり前なんだけど打順はその都度その都度、試合の前に決められて発表となるんだよ。
そしてもうひとつ、つけ加えると高校野球の場合はポジションで背番号が決まる、ほとんどの場合。
ざっというと、ピッチャーが1、キャッチャーが2、そのあと内野手から時計の反対まわりに一塁手が3、二塁手が4、三塁手が5、ショートストップが6。
エッ?って思う?そうそう、ここがちょつと紛らわしい。だってショート、って時計の反対まわりで言うなら5、ダヨネ?でもって、三塁手が6、になるはずだって思う人もいるんじゃないかな?
でも、ショートが6、でサードが5.これでいいの。
実はここには野球の長くて古いレキシ、があるんだよ。
それをチョッと話すとね、それは野球、つまりベースボールがクリケットというスポーツから枝分かれして発展したもの、って言われてて、千八百年代のことなんだけど、ベースボールが始まったころは内野手はみな、それぞれのベースに「付いてた」らしいんだ。
つまり一塁手はファーストベースについてて、二塁手はセカンドベースについてて、って感じで。
そして当たり前に三塁手はサードベースのつく、で問題のショートなんだけど正式にはショートストップと言って、当時はピッチャーとセカンドベース、つまり二塁手の間にいたらしいんだ。
そのころは投手は投げるだけ?みたいで二塁手が取る前に取る?みたいな役割、だったようなんだ、ショートって。
だけどいつの頃からか、誰かが考えたんだろう、そんなことよりももっと効率的?つまり相手のヒットゾーンをクマナク?狭めるにはどうしたらいいんだろう?って。
それで考え出されたのが今の守備陣形でいつの間のかそれが最も効率的な普遍的な守備体系になったらしい、のだ。だから三塁手よりも右にいるショートが6、なんだ。そんなわけ。
じゃあちょっと話が横道にそれちゃったのでまた元の戻して背番号の発表に戻ろうね。
「二番、龍ヶ崎勇士!」
まあ、これは当然、カントクサンも勇士以外の捕手にはほとんど何も教えていない、勇士と心中、のケハイだから。当の勇士も至極当然に背番号をイタダク。続いて三番は?
「平山健大!」
これもガチガチのレース。他に候補ナシ。
「四番、刀根護!」
右投げ左打ちの護は出塁率が高く上位打線に入ることほぼ間違いなしだ。守備にやや難があるもチームの中心のひとり。続いてブチョウ先生の声が。
「五番、松本亮太!」
小柄だけど小回りが利きバントの名手。守備も堅実でミスのない選手だ。
続いて・・・・
「六番、小林祐弥!」
例の濡れ衣事件で心配をかけたけどみんなのお陰でミゴトに復活!走攻守三拍子揃ったチームの要。このポジションもカントクサンはレギュラー争いはさせず、固定で本人の自覚を促す作戦に出たのだった。
そしていいよ外野へと発表は進む。ブチョウ先生の声がまたまた響き渡る。
「七番、杉山駿斗!」
お~、ついにレギュラー獲得!親父さんが
「同じ実力なら他の選手にレギュラーを!」
と旧知の仲のカントクサンに頼んだ件、みんなもオボエテルヨネ?
それだけ厳しい競争を勝ち抜いた駿斗は、リッパダヨネ!一時は親をウランだ?こともあったっけ?余計なことイウナ!ってね。まあ、メデタシメデタシ!
そしてセンターのポジションは?
「八番、稲森拓海!」
やっぱり、ここもガチガチだよね、うたがいようもなく・・・・
さあ、いよいよ最後のポジション、ライトだ。
「九番、久保田圭介!」
こころなしかブチョウ先生の声が大きかったような気がしたのはキノセイカ?もしかするとココまで、がいわゆるレギュラー、の背番号なので思わずそう聞こえたのかも知れない。
ヒトケタ番号をもらった選手はこれでひと安心だ。
ほぼスタメンは間違いなしだから。ブチョウ先生は次の十番を発表した。
「十番、金子啓太!金子にはひき続きキャプテンを命ずる!」
啓太は
「ハイっ!」
と元気よく返事をした。
レギュラー番号をもらえなかったということで悪びれることもなく、実にハキハキト元気よく、快活に番号を受け取った。
やはりこのチームのキャプテンは啓太しかいない、おそらく誰もがそう思っているはずだった。
そしてブチョウ先生は二十番までの背番号を言い渡しベンチ入り全員の背番号が決まった。
十九番と二十番は一年生の期待の新人が入った。
そして他は全員三年生が入って、結局二年生はひとりもベンチ入りしなかった。
年に三回あるイベント、そう、背番号授与式のうち、最大の催し物ともいえる夏季大会のベンチ入りメンバーが決まった。
だけど悲しいことがひとつあったのだ。三年生でひとりだけ背番号をもらえなかった選手がいたのだ。
英誠学園の三年生部員は全員で十九人。二年生部員のベンチ入りはなく一年生がふたり入ったからそう、ひとりあまってしまったのだ。
それはいつもスコアラーを主にやってくれている星康人だった。小柄で非力で既定の重さのバットをきちんと振り切ることさえ難儀にしてしまう選手だ。
しかし彼は三年間、厳しい練習を他の選手と同様に耐えてきたのだった。決して甘えることなく黙々と。
そんな康人のことを思ってか、三年生全員が今日は誰一人として浮かれる雰囲気がなかったのだ。
もちろん康人自身が十分に予期していたことではあろう、この結果は。だけどやっぱり人間だ、心の片隅でもしかしたら、という期待はまったくなかったといえるだろうか?
なので三年みんながやはり沈んでしまうのだ、ヤスのことを思って。
今日もいつもの通り駅前の餃子屋に立ち寄った。三年生全員でだ。
だけど話題はあっちへ行ったりどこかへ飛んだり、誰もが気遣いながら決して「そこ」に、つまり背番号だのベンチ入りがどうのだのという話題にまちがっても行かないように、恐る恐る話をしていたのだ。
たぶん、いやほぼ間違いなくヤスはスコアラー、正式には記録員というが、その役割でベンチには入るはずだ。でも当たり前のことだけど絶対に試合には出ることが出来ないのだ。
もう負けが決まって(そういう試合展開になったときに、高校野球では残念ながら明らかに力量が劣っているとわかっていても控え選手を出場させることがある)いてもどんなことがあっても、ヤスは試合に出ることはないのだ。
背番号をもらっていない、そう、彼は選手、ではないのだ。この辛さは野球をやったことのある者なら絶対に想像がつく。
またそうじゃなくてはならないのだ。
康人はいつもと変わらずにうまそうに餃子を頬張っていた。次から次へとパクパクと。いったいあの小さな体のどこに吸収されていくのかと思うほどに。
だからまわりのみんなもいつの間にか普段のバカ騒ぎとなっていき、店内はふつうの高校生の集まりと化していったのだった。