常務の秘密が知りたくて…
メールで送られてきた資料を確認しようとフォルダをクリックして中身が開くのを待っていると、いきなり机の上に掌が強く押し付けられた音がして私は顔を上げた。
すると無表情にこちらを見下ろしている常務と目が合う。睨まれているわけでもないのに鋭い眼差しに私は息を呑んだ。
「言い方を間違えた」
なんのことかわからずに私は常務を見つめる。けれど何かを口にすることは出来ない。
「秘書だから気にしているわけじゃない。お前だから気になっているんだ」
私は目を丸くした。常務はそれだけ告げると机に突いていた手を離し踵を返す。
「男に騙されて借金でも抱えてんのか?」
「違います!」
すっかりいつもの調子に戻った常務に私は反射的に否定した。
「……妹に仕送りしてるんです」
「妹?」
こちらを向いた常務の眉がひそめられた。ここまでくると言い繕ってもしょうがないので観念して事情を説明し始める。
「大学生の妹がいるってお話ししましたよね。私が入社してしばらくしてから父が倒れて一命はとりとめたもののリハビリが必要な状態になってしまったんです。それで経済的なことで妹が大学を辞めるなんて言うので」
「それでお前が妹に仕送りしてるのか」
私は静かに頷いた。そして念押しするように付け加える。
「妹は私と違ってすごく優秀なんです。特待生で入学して学費は免除なんですけど、だからその分バイトをして学業をおろそかにするわけにはいかないし、住むところだってそれなりのところじゃないと心配だし」
「自分のことを差し置いてか」
「妹はすっごく可愛いんです。何かあったら洒落になりません」
昔からシスコンと言われることもあったが、本当に我が妹ながら頭もよくて可愛くて出来た娘なのである。私は行かせてもらった大学をお金のことで妹に諦めさせるわけにはいかない。奨学金も今はなかなか返すのが大変な時代だし。
すると無表情にこちらを見下ろしている常務と目が合う。睨まれているわけでもないのに鋭い眼差しに私は息を呑んだ。
「言い方を間違えた」
なんのことかわからずに私は常務を見つめる。けれど何かを口にすることは出来ない。
「秘書だから気にしているわけじゃない。お前だから気になっているんだ」
私は目を丸くした。常務はそれだけ告げると机に突いていた手を離し踵を返す。
「男に騙されて借金でも抱えてんのか?」
「違います!」
すっかりいつもの調子に戻った常務に私は反射的に否定した。
「……妹に仕送りしてるんです」
「妹?」
こちらを向いた常務の眉がひそめられた。ここまでくると言い繕ってもしょうがないので観念して事情を説明し始める。
「大学生の妹がいるってお話ししましたよね。私が入社してしばらくしてから父が倒れて一命はとりとめたもののリハビリが必要な状態になってしまったんです。それで経済的なことで妹が大学を辞めるなんて言うので」
「それでお前が妹に仕送りしてるのか」
私は静かに頷いた。そして念押しするように付け加える。
「妹は私と違ってすごく優秀なんです。特待生で入学して学費は免除なんですけど、だからその分バイトをして学業をおろそかにするわけにはいかないし、住むところだってそれなりのところじゃないと心配だし」
「自分のことを差し置いてか」
「妹はすっごく可愛いんです。何かあったら洒落になりません」
昔からシスコンと言われることもあったが、本当に我が妹ながら頭もよくて可愛くて出来た娘なのである。私は行かせてもらった大学をお金のことで妹に諦めさせるわけにはいかない。奨学金も今はなかなか返すのが大変な時代だし。